田中泰延『読みたいことを書けばいい』あらすじ&感想。増刷15万部!

文章術の本がベストセラーは稀有です。面白くて仕方ないとTVが紹介。

著者田中泰延(ひろのぶ)氏は元電通のコピーライターです。ネットエッセイでは500万ページビューの読者をもつ有名人です。初版発売(2019年6月)から二ヶ月ですでに15万部数突破のベストセラー本です。TBS系列で毎週日曜日のバラエティ番組「林先生の初耳学」(2019年8月18日)で、林修氏に「おもしろくて仕方がない」と紹介されました。

・Webライターのプロになりたい。
・最新の文章術を学び直したい。
・何を書いていいのか悩んでいる。

この三点のうち一つでも当てはまればぜひおすすします。「ターゲットなど設定しなくていい」「思いを届けたいで書くと読まれない」などなど目からうろこの話が連続します。

じつは僕自身は、購入したまま半年も読まなかったのです。なぜ今まで読まなかったのか? その理由は・・・。本をぱらりと開いて、

①活字サイズが大きすぎる。

②行間が空きすぎ。

③自分のWeb原稿をQRコード付きで列記している。

①②で、これはネット系の書き方だ・・・ネットでお金をお金を稼ぐノウハウだな・・・と思い込んでしまった。内容はスカスカに違いない、と。

ま、QRコード付きだからそっちを読んでからだな、、、と。結局そのまま半年を経てしまったのです。

しかし、反省です。おもしろい本です、たしかに、面白くて仕方ないのです。

この本『読みたいことを、書けばいい。』のあらすじと感想を書きます。章立ては以下の通りです。

:序章 なんのために書いたか

第1章 なにを書くのか―ブログやSNSで書いているあなたへ

第2章 だれに書くのか―「読者を想定」しているあなたへ

第3章 どう書くのか―「つまらない人間」のあなたへ

第4章 なぜ書くのか―生き方を変えたいあなたへ

おわりに いつ書くのか。どこで書くのか。

なぜ書いたか・・「出版社から依頼されたので、いやいや」(笑;

【著者紹介】
田中泰延 : 1969年大阪生まれ。早稲田大学第二文学部卒。1993年株式会社電通入社。24年間コピーライター・CMプランナーとして活動。2016年に退職、「青年失業家」と自称しフリーランスとしてインターネット上で執筆活動を開始。映画・文学・音楽・美術・写真・就職など硬軟幅広いテーマの文章で読者の熱狂的な支持を得る。「明日のライターゼミ」講師。『読みたいことを、書けばいい。―人生が変わるシンプルな文章術』が初の著書。

序章 なんのために書いたか

この本を「なんのために書いたか」の答えは「出版社から依頼されたので」・・・、「いやいやながら書いた」、「自分のために書いた」と「自分」を強調しています。

成功したい、思いを届けたい、で書くと人に読んでもらえない文章になる

成功したい、思いを届けたい、などなどの目的意識は結構だが、それで書くと結局、人に読んでもらえない文章ができあがってしまう。

・・・うっ! 耳が(目が?)痛い。いきなり小槍で突かれた気分です。思いを・・云々、成功したい・・云々。

序章の白眉は出版社編集者からの依賴文がまんま全文掲載されていることです。依頼文の中で気になったのは・・・・・・文章が伝わらないと悩む人は、今、とても多いです。その大きな原因の1つは、「書き手が嘘をついていること」にあるのではないかと、

・「本当に思っていないことを書く」

・「他人から借りてきた言葉をそのまま使う」

・「その対象に愛がないのに愛があるように紹介する」

第一章・・随筆とはなにかを考えなさい。辞書を引くんじゃないよ。

第1章 なにを書くのか

この章は起承転結の「起」です。

・ネットで読まれている文章の9割は随筆、、、、「なにを書くのか」、あなたは、随筆を書くのです。随筆とは何か考えなさい—う~ん、辞書には「思うがままに筆に任せて書いた文章」とあるが、そんな便利な筆があるならぜひ購入したい。と、田中泰延(ひろのぶ)さんはおっしゃています。

随筆とは・・・「事象と心象が交わるところに生まれる文章」です。事象とは、見聞きしたことや、知ったこと。それに触れて心が動き、書きたくなる気持ちが生まれる、それが心象である。・・・。事象寄りのものを書くのが「ジャーナリスト」「研究者」であり、心象寄りのものを書くのは「小説家」「詩人」である。そのどちらでもない「随筆」という分野で文章を綴り読者の支持を得て生きていくのが一般に言われる「ライター」なのである。

ターゲットなど想定しなくていい。狩猟じゃないんだから。

第2章 だれに書くのか

この章は「起承転結」の「承」です。

・「起」で何を書くかを決めた。「承」では だれに書くのかを考えるのです。と、田中泰延(のぶひろ)さんはおっしゃっています。

世の中にはびこる「だれかにメッセージを届けよう」というメッセージ自体が間違っている。あなたは、だれかに褒められたい? だれかを説得したい? それはやめなさい。朝、出かけるとき、最低限、自分が気に入るように服を着るだろう。文章もそれでいいのだ。自分が気に入るように書きなさい。

ターゲットなど想定しなくていい

↑ 上の一行16文字だけに著者は丸まる1ページを使っています。デッカイ、ゴシック文字で。

読み手など想定して書かなくていい。その文章を最初に読むのは、間違いなく自分だ。自分で読んでおもしろくなければ、書くこと自体が無駄になる。「自分で読んでおもしろい文章」とは、「まだだれも読んでいない文章を自分で作る」ということである。

この2章のクライマックスは、「書いても、だれも読まない。なぜなら、あなたは宇多田ヒカルではないからだ」・・・がびーん。

つまらない人間とは、「自分の内面を語る人」

第3章 どう書くのか

起承転結の「転」です。書き方の具体的な方法を述べてくださいます。方法、ハウツーですよ。ハウツー、好きです。しかし、いきなり急所をどつかれます。

どう書くのか その1

・つまらない人間とは、「自分の内面を語る人」である。

・少しでもおもしろく感じる人というのは、その人の外部にあることを語っているのである。事象とは、つねに人間の外部にあるものであり、心象を語るためには事象の強度が不可欠なのだ。

物書きは「調べる」が9割9分5厘6毛

↑ これも、まる1ページ使う。デカいゴシック。

・しかし日本の教育現場では一番ダメな方法がまかり通っている。「ハイ! 感じたことを書きましょう!」というやつだ。そう先生に言われて「とてもおもしろかったです」と感想を書く、これが小学生の作文である。

おぉおぉ、これ図星です、僕の一行作文・・・中学生になってもそうでした。

ライターの仕事はまず「調べる」ことから始める。そして調べた9割を棄て、残った1割を書いた中の1割にやっと「筆者はこう思う」と書く。調べもせずに「文章とは自分の表現をする場だ」と思っている人は、ライターというフィールドでは仕事をすることができない。そういう「わたしの想いを届けたい!」人は、歩道橋で詩集を売ろう。

調べるとは、必要なら大学図書館、国立国会図書館にも出向き、現場へも出向き、一次データ(資料)をとことん調べることですよ、とおっしゃっています。・・・ネットの情報は、また聞きのまた聞きが文字になっている・・・ググるだけでは調べたとは言えないのです。

金持ちになりたいのではない。自分の正しさを証明したい

第4章 なぜ書くのか

そして「結」です。なぜ書くのか・・・書いたらなにが起こるのか・・・。

著者田中泰延(のぶひろ)さんが言います。

あなたは世界のどこかに、小さな穴を掘るように、小さな旗を立てるように、書けばいい。するとだれかがいつか、そこを通る。・・・その小さななにかが、あくまで結果として、あなたの世界を広くしてくれる。

・ライターになりたい人はもっと起業家の話を聞いたほうがいい。10個目の商売でやっと成功したとか、5つ会社をつぶしたとか、勝負を賭けた商品が全然売れなかったとか・・・ライターも同じように、書いてみても、ほぼ駄目なことだらけだ。

・DeNA、GMO、ザッパラス、Klab、パーソナルキャリ、北の達人コーポレーション、これら東証一部上場会社を創りあげた仲間たち(注:著者の学生時代の仲間)に共通するのは「金持ちになりたいのではない。自分の正しさを証明したい」ということだ。

・書くことはたった一人のベンチャー企業だ。

・ここではないどこかへ行くために、わたしは、辛くても、山を登るように文字を書く。登山は、道の終わりから始まるのだ。

まとめ

登山がでました。僕の道楽は十代からずっと山歩きです。うれしいです。・・・「辛くても、山を登るように文字を書く」・・・『読みたいことを、書けばいい。』をもっと早くに読めばよかった。

この本の肝は第3章ですね。調べて、調べて、調べて、書く。間違えても「何か言いたい」ということでは書かない。言いたいことや自分の内面を書くのではなく、調べに調べた、おもしろい事象(こと)を書く。

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