「マスク効果ない」の医学論文。サージカルマスクでも院内感染。

医学論文は「マスク」はウイルス感染予防には無効と指摘。

街街にマスク着用の人々が往来しています。ウイルスによる急性呼吸器疾患の感染予防になると思い込んでのことです。しかし、医学的には有効な効果はないと各種の論文で報告されています。医師が使用するサージカルマスク(手術マスク)着用でもウイルスによるアウトブレイク(院内感染)は防げない

以下、医学データ紹介と補足の要約を記します。

注:文中の医療従事者とは、厚生省規定で、

(医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、歯科衛生士、診療放射線技師、歯科技工士、臨床検査技師、衛生検査技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、臨床工学技士、義肢装具士、救急救命士、言語聴覚士、管理栄養士または栄養士)。

Hospital Infection Control
編集指導:根岸感染制御学研究所 所長・東京医療保健大学 名誉学長 教授 小林寬伊 

病院感染、院内感染対策学術情報

日常的なマスク着用による感染予防効果について

Y’s Letter Vol.4.No.8

Publised online:2018.04.17

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はじめに

インフルエンザ等の急性呼吸器疾患の感染予防として、医療機関や市井において日常的にマスクを着用している姿が多く見受けられます。日常的なマスク着用が感染予防にどれだけ効果があるのか、現在までのマスク着用の有効性に関する報告等について述べます。

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日常的な言葉に置き換えてみます。

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はじめに

新型コロナウイルスの流行にともない感染予防の目的で病院などの医療機関に勤務する人々や、一般の人々が街街でマスクを着用しています。これらの人々のマスクが感染予防にどれだけの効果があるのかを報告します。

2009年新型インフルエンザ流行時期に行われたインフルエンザ等の急性呼吸器疾患の感染予防に関する医学データです。

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マスク着用単独での感染予防効果

インフルエンザ発症者がマスクを着用することで家庭内感染を防ぐことが可能であるか検討した調査が、2008~2009年のフランスにおけるインフルエンザ流行時期(フランスにおいてサーベイランスシステムに報告されるインフルエンザ様疾患の国内発生率が算出閾値を超えた期間)に行われました1)。インフルエンザ診断テスト陽性となり、48時間症状が続いている患者のいる家族を対象として、マスク着用群とコントロール群に分け、マスク着用群では発症者が他の家族と同じ部屋や限られた空間(車の中など)にいる場合にマスクを着用することを5日間実施しました。その結果、調査期間中に家族がインフルエンザ様症状を示した割合は、マスク着用群は16.2%、コントロール群は15.8%で有意差はなく、マスク着用による感染予防効果は認められませんでした。

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言葉を置き換えます。

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研究はインフルエンザ診断テスト陽性者で48時間以上症状が続いている患者のいる家族を対象として行われました。

マスク着用群

マスク非着用群

この二つのグループに分けて実施されたのです。どちらのグループにも感染者と日常生活を5日間共に暮らしてもらいました。マスク着用グループは、感染者と同じ密閉空間(部屋やクルマの中)では必ずマスクを着けます。

その結果、調査期間中に家族がインフルエンザ症状を示した割合は、

マスク着用群は16.2%、

マスク非着用群は15.8%

ほとんど差はなく、マスク着用による感染予防効果は認められなかった。

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日本での医療従事者対象「マスク効果」研究

日本において、医療従事者を対象にマスク着用の有無による感染予防効果を調べた報告として、医療従事者32名をマスク着用群17名、非着用群15名に分けて77日間、咽頭痛、鼻水、咳など風邪症状を記録する調査が行われました2)。調査期間中、マスク着用群は病院において業務中はサージカルマスクを着用し、非着用群は手術室での業務など仕事上の義務として着用が必要な場合を除き、マスクの着用は控えました。結果として、マスク着用群では頭痛や気分が悪いと感じる傾向が示されましたが、風邪症状の重症度に有意な違いはなく、風邪症状を有した平均日数はマスク着用群が16.1±13.6日、非着用群が14.2±14.1日と統計的な有意差は見られなかったと報告されています。

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言葉を置き換えます。

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日本では医療機関に勤務する人(医者、看護師、従業員など)32名を対象に77日間、喉の痛み・鼻水・咳などの風邪症状を記録する調査が行われました。

マスク着用群17名

マスク非着用群15名

マスク着用グループ17名は病院内ではサージカルマスク(手術用医療マスク)を着用。

マスク非着用グループは手術室での仕事上の義務として着用が必要な場合を除きマスクは着用しなかった。

結果、頭痛や気分が悪いと感じる傾向を示したのはマスク着用グループの方が多かったが、大した差はなかった。

風邪症状が続いた日数は、

マスク着用群  16.1±13.6日

マスク非着用群 14.2±14.1日

統計的な意味のある差はなく、マスク着用の効果は認められなかった。

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また、最近の国内での調査としては、サージカルマスクのインフルエンザ流行時の感染予防効果について、感染制御実践看護師の所属する施設を対象として2016~2017年流行時(2017年3月31日まで)を調査期間としたアンケート調査が実施されました3)。111施設中71施設から回答があり、調査期間中、アウトブレイクがあった施設は55施設で、調査では[1]サージカルマスク着用の病院規定の有無、[2]サージカルマスクの着用対象者、[3]サージカルマスク着用場面、[4]サージカルマスク着用の実施期間のそれぞれについてアウトブレイク発生状況の解析が行われました。その結果、すべての項目においてアウトブレイク発生数との有意差は認められず、サージカルマスク着用を義務付けただけでは有効な予防効果はなかったと報告されており、多元的な対策効果を検討する必要があります。

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言葉を置き換えます。

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また日本国内でウイルス感染者治療を行っている病院でのアウトブレイク(院内感染)調査も行われています。2016年~2017年の調査です。

調査対象111の病院の71病院から回答がありました。

院内感染があったのは55の病院です。

1・サージカルマスク(手術マスク)着用の病院規定の有無

2・サージカルマスク(手術マスク)の着用対象者

3・サージカルマスク(手術マスク)着用場面

4・サージカルマスク(手術マスク)着用の実施期間

4項目において院内感染発生状況の解析が行われました。

その結果、すべての項目において院内感染発生数とマスク着用の意味のある数字は認められなかった。

サージカルマスク(手術、医療用マスク)着用を義務付けただけでは有効な予防効果はなかった。

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一方で、医療従事者がインフルエンザ感染予防を目的として、サージカルマスクとN95マスクの着用による効果の差を調べた報告もあります4)。カナダのオンタリオ州にある8つの3次ケア病院の救急、内科、小児科の看護師446名が参加し、調査期間中、発熱患者への対応時に予めフィットテスト済みのN95マスクまたはサージカルマスクを着用する群に分けてインフルエンザ予防効果を確認しました。その結果、N95マスク群で48名(22.9%)、サージカルマスク群で50名(23.6%)のインフルエンザ感染が生じ、マスクの種類による感染予防効果の差はみられなかったと報告されています。

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カナダのオンタリオ州にある8つの3次ケア(重症~危篤 救命救急センター)病院の救急、内科、小児科の看護師446名が参加した調査があります。

発熱感染者への対応の際の「マスクの種類による感染予防効果」を調べました。

・フィットテスト(顔の形状に合わせる)を済ませたN95マスク群

注:N95マスク・・NIOSH(米国労働安全衛生研究所)規格に合格したマスクです。日本の厚生労働省では、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)、新型インフルエンザや結核菌の対策指定品の一つとしています。

・サージカルマスク(手術マスク)着用群

その結果、N95マスク群で48名(22.9%)、サージカルマスク群で50名(23.6%)のインフルエンザ感染が生じました。マスク着用の有無だけではなく、マスクの種類による感染予防効果の差もみられなかった。

まとめ

現時点ではマスク着用単独およびマスクの種類による予防効果は明確ではなく、差は認められていません。

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マスク着用に関する医学論文は延々とあります。詳細をさらに知りたい方は

https://www.yoshida-pharm.com/2018/letter128/ をご覧ください。

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WHO(世界保険機関)が「マスク不要」と説いて、「手洗いは有効」としている根拠がわかると思います。

ただし、水や石鹸使用で手を洗ってもコロナウイルスは洗い流されるだけで死滅はしません。現状、厄介なウイルスです。

エチルアルコール、次亜塩素酸ナトリウムで死滅します。

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