支援物資の「恩返し」武漢 を代表し渋谷で マスク配るかぶり物の中国人女性
コロナウイルス騒動・・渋谷で武漢の人が・・の記事です。支援物資の「恩返し」武漢 を代表し渋谷で マスク配るかぶり物の中国人女性話題に – 毎日新聞ニュース
<武漢からの恩返し>と書かれた段ボール箱から1枚、また1枚と道行く人にマスクを配るかぶり物姿の中国人女性が話題になっている。この光景を撮影した映像が26日までに中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」などで1900万回以上も再生された。
新型コロナウイルスによる肺炎が広がった武漢には日本政府が各国に先駆けて支援物資を届けたほか、日本から届いた段ボール箱に「山川異域 風月同天(離れていても、私たちは同じ空を見ている)」という漢詩が書かれていたことも中国で話題になっている。
・・・毎日新聞が伝えた雑感記事です。
この記事での・・・山川異域 風月同天(離れていても、私たちは同じ空を見ている)・・・にうれしくなりました。(離れていても、私たちは同じ空を見ている)の部分です。
これ、すごい名訳です。
2月中旬ごろから武漢への支援物資に漢詩が書かれていると話題になっていました。
『山川異域 風月同天』の出典は、中国唐代の高僧鑑真和上の伝記「唐大和上東征伝」。「山と川は違っても、同じ風が吹いて同じ月を見る。 場所が違っても同じ自然や志で繋がっている。」の意で、天武天皇の孫 長屋王から献納された1,000着の袈裟に縫い付けられていたとされる漢詩の一節で、この詩に鑑真和上が心を動かされ、仏縁のある国と感じ抱き、来日を決意したと伝わります。(中央区中国観光協会特派員ブログ)
・・・出典は鑑真和上の「唐大和上東征伝」。漢詩そのもは日本人の作品です。外国語で相手国(唐・中国)の高僧、インテリの心を捉えるとは、たいしたものです。
今般、日本の友好団体・姉妹都市等から中国に送られた支援物資に、当該詩の他『豈日無衣 与子同裳(服がないなら、1着の服を一緒に着ればいい。 “肩を並べて一緒に戦う” 意。)』『青山一道同雲雨 明月何曾是両郷(風も雨も乗り越えた親友同士、別々の場所で同じ月を見ている。場所は離れていても心は一つ。)』等が添えられ、「モノ」と共に「情」を送った振る舞いは、心に深く刻まれたようです。(中央区中国観光協会特派員ブログ)
『山川異域 風月同天』・・・山と川は違っても、同じ風が吹いて同じ月を見る。 場所が違っても同じ自然や志で繋がっている。・・・
・・・たいていはこの直訳調で紹介されていますね。それで正解です。文句のつけようはありません。
井伏鱒二「サヨナラだけが人生だ」を思い出す名選択名訳です。
しかし毎日新聞の記事のような街風景の雑感で、この直訳調のままゆくと文字数45文字は長い、雰囲気が合わない、と考えたのではないでしょうか。「離れていても、おなじ空を見ている」だと19文字です。座りのいい文字数で収まります。
毎日新聞の社会部記者の考案なのかデスクの知恵なのか整理部(「編集制作センター」)の編集段階での決定なのか。名選択というか名訳というか。拍手です。
パッと思い出したのは、
井伏鱒二の訳詩集「厄除け詩集」に収録された訳詩が有名「サヨナラ」ダケガジンセイダでした。
コノサカズキヲ受ケテクレ
ドウゾ ナミナミツガシテオクレ
ハナニアラシノ タトヘモアルゾ
「サヨナラ」ダケガジンセイダ
原典・・・「勧 酒」勧君金屈巵 満酌不須辞 花発多風雨 人生足別離
直訳・・・君に勧める黄金の盃。なみなみと注ぐが、遠慮はしなさんな。花が咲けば、とかく風雨が多い。人生には別離がつきものだ。
あぁあ・・・そこまで話を大きく膨らませなくても・・・かもしれませんが。
いや、名訳、名選択だとは思います。
いや、もちろん、「おなじ空を見ている」という言葉は、様々な歌曲の歌詞に出てきます。私たち日本人の好きなフレーズです。ぼくが思い出したのはシンガソングライター&小説家の加藤エミリの『空』です。彼女の「空」歌詞に、
離れていても二人は
同じ空を見ているよ
いつまでも私だけの
そばにいるよと言ってよ
と出てきます。
まとめ
恋愛歌ですから使用の意味合いは異なりますが言葉はおなじです。毎日新聞にこの『空』の記憶があったかどうか。新聞、特に社会部原稿となると瞬間瞬間の一瞬勝負ですから、あれこれ思い悩む時間などはありません。
瞬間判断で『山川異域 風月同天』を(離れていても、私たちは同じ空を見ている)と括弧入れしたのはすごいですね。ワクワクしました。