映画「剱岳点の記」ラストシーンの【手旗信号】はフィクション

映画「剱岳点の記」は大作です。すばらしいです。圧倒されます。

しかし、ラストシーンであからさまなフィクション!「手旗信号」シーンは創作、フィクションです。感動をたかめるための創作?

「手旗信号」は、フィクション。感動をたかめる創作?

・・く前人未踏の難峰・劔岳に挑んだ男たちの命を懸けた真実の物語!

・・「なぜ、これほど過酷な撮影を敢行し、耐えられたのか」
「劔岳 撮影の記 標高3000メートル 激闘の837日」は、その答えを含む、人生の真実を捉えた迫真のドキュメントである。

【コピーライト】(C)2009「劔岳 撮影の記」製作委員会

・・[映画.com ニュース] 今年6月の公開以来、興収27億円の大ヒットを記録している木村大作監督のデビュー作「劔岳 点の記」。同作の2年間にわたる撮影を追ったドキュメンタリー

映画「剱岳点の記」はドキュメントと宣伝しています。が、違和感、大いに感じます。 ドキュメントとは、フィクション(ドラマ)番組に対して、「事実、現実」を記録するノンフィクションですが、感動のラストシーンで嘘をついています。山岳会と測量隊がそれぞれ手旗信号で互いに称え合う・・これは嘘、作り話です。

そのシーンは・・こうです。

柴崎(測量隊)と小島(山岳会)は山の対面で互いを見つけた。
小島は「剣岳、初登頂おめでとうございます。この歴史的登頂は、日本登山史に後世まで語り継がれるでしょう。生田信、木山竹吉、宮本金作、岩本鶴次郎、宇治長次郎、柴崎芳太郎。剣岳を開山したのは、あなた方です。ただ地図を作るためだけに、自らの仕事を成し遂げられたことを、心より尊敬します」と手旗信号で栄光を称えた。

そして生田も毛嫌いしていたはずの山岳会のメンバーに向かって、「剣岳、登頂成功おめでとうございます。小島烏水と山岳会のみなさんの栄誉を讃えます。あなたたちは、私たちのかけがえのない仲間です」と送り返した。

個人名をならべ、さらに感動をアップさせますが、山岳会にそれを求めるのは無理筋です。

互いに称え合うという感情のながれは事実だとおもわれます。
それを盛り上げるために 手旗信号 を創作したのです。

事実は手旗信号ではなく、一通の「電報」だった

原作の新田次郎「剱岳点の記」では、次のように描かれています。

・・・

彼等の一行は予定もはるかに早く剣沢の天幕場に戻った。そこには、野菜を背負って登って来た人夫が待っていて、託されて来た手紙の束を柴崎に渡した。その中に一通の電報があった。
剣岳初登頂おめでとうございます。なお、頂上におけるかずかずの貴重なる歴史的発見は日本登山史を飾るものとして後世に伝えれるでしょう。あなたがたの輝かし成功に心から、尊敬と感謝の言葉を送ります。 山学会小島烏水

柴崎は目頭を曇らせた。競争相手であった山岳会が、実は剣岳登頂の意味を最もよく理解する味方であったことに泣けたのであった。

・・・

まとめ

原作は「活字」であり、映画は「ビジョン」だから盛り上げ方も違うという論もありますが、手旗信号のフィクションは、ドキュメントを売りにしているにしては過剰のそしりを受けるべきと、ぼくはおもいます。

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