国営テレビ「ロシア1」がウクライナに負けるとプーチン批判

国営放送「ロシア1」の特集番組でロシア軍の退役・大佐が ウクライナ戦争 では負けると現状を説明しプーチン政権批判を・・と英国BBC(公共放送)が伝えています。米誌「ニューズウィーク」も、Yahooニュースも追いかけています。ウクライナ応援の視点ではうれしいですが、CNNが報道を否定したり・・・本当のところはどうなっていののかを検証します。

BBCはロシア軍大佐の「ウクライナ兵の士気の熱さ」評価を報道

BBC(英国公共放送)は、こう伝えています。

ウクライナ侵攻での「ロシアの状況は悪化する」 
https://www.bbc.com/japanese/61488829
2022年5月18日
スティーヴ・ローゼンバーグ・ロシア編集長

ロシアの主要メディアはウクライナでの戦争について、国外ではまず見られないような視点を提供している。まず、戦争と呼ぶことすらしない。しかし、16日に国営テレビで放送されたある番組で、驚くべき珍しいやりとりがあった。

国営テレビが1日に2回放送する、目玉トーク番組「60 Minutes」での出来事だった。スタジオでは普段、ウラジーミル・プーチン大統領大統領がウクライナでの「特別軍事作戦」と呼んでいる出来事も含め、ロシア政府のあらゆる主張に沿った宣伝が繰り広げられている。

ロシア政府は現在も、ロシア軍の作戦は予定通りに進んでいるとの主張を貫いている。

しかし16日の夜、軍事アナリストでロシア軍退役大佐のミハイル・ホダレノク氏は、全く違う見方を示した。

ホダレノク氏は番組の中で、ウクライナが欧米から追加の軍事支援を受けると「(ロシアにとっての)状況は明らかに悪化する」、「ウクライナ軍は100万人を武装化できる」と警告した。

またウクライナの兵士について、「祖国を守りたいという思いは非常に強い。戦場での究極の勝利は、守るべき思想のために血を流している兵士たちの高い士気によって決まる」と解説した。

「(ロシアの)軍事的・政治的状況の最大の問題は、どんなに認めたくないとしても、我々が政治的に完全に孤立し、全世界を敵に回している点だ。この状況を解決しなければならない」

「我々に敵対する42カ国の連合が存在し、我々の軍事・政治的な、そして軍事技術的な資源が限られている状況は、正常とは言えない」

スタジオにいた他のゲストは黙っていた。いつもは熱烈にロシア政府を擁護する司会のオルガ・スカベイエヴァ氏も、妙に沈んでいるように見えた。

色々な点で、これはホダレノク氏による「だから言ったのに」というメッセージだ。

大佐のミハイル・ホダレノク

写真:元・大佐のミハイル・ホダレノク BBC掲載より

戦場での究極の勝利は、守るべき思想のために血を流している兵士たちの高い士気によって決まる」

↑ じつはアメリカの退役陸軍大将(南カリフォルニア大学教授)デビッド・ペトレイアス氏は ウクライナ人はロシア軍を憎んでいる。「人間の盾」であれ「どんな武器」であれ、手にして喜んで戦う という士気の高さを指摘していました。

関連記事:ロシアは負ける説 https://tomo3koko.com/russia-lose/

むろん士気だけが勝敗を決するのではない。兵器、作戦、兵士数など要因はさまざまですが、士気は最大要因です。格闘技などと同様です。

軍人実戦経験者は同様の分析をしています。最前線で殺し合うのは兵士にほかなりません。

ウクライナとの軍事紛争はロシアの国益にならない・・ミハイル大佐

BBC記事をつづけます。

ロシアがウクライナに侵攻する以前の2月、同氏はロシアの防衛専門誌への寄稿で、ロシアがウクライナとの戦争に簡単に勝つと主張する「熱心なタカ(強硬派)と性急なカッコウ」を批判している。

ホダレノク氏は当時、「ウクライナとの軍事紛争はロシアの国益にはならない」と結論付けた。

これは、印刷物での批判に過ぎなかった。しかし、何百万人もの視聴者がいるテレビでとなると、まったく別の次元の話だ。ロシア政府は独立系ニュースメディアを閉鎖し、世論形成の主要なツールであるテレビがメッセージ性を持つようにすることで、国内の情報状況をコントロールすることに全力を注いできた。

だからこそ、ロシアのテレビでこうした現実的な分析を聞くことはめったにない。

まれな出来事だ。しかし唯一無二ではない。ここ数週間、テレビでも批判的な意見が聞かれるようになった。3月には別の人気トーク番組で、あるロシア人映画監督が「ウクライナでの戦争は恐ろしいもので、私たちの社会に非常に抑圧的な影響を及ぼしている」と語った。

では「60 Minutes」では何が起きたのか? ウクライナに関する自発的かつ故意の、それでいて予想外の警告が、網の目をすり抜けたのだろうか?

それとも、「特別軍事作戦」の進展に伴うネガティブなニュースをロシア国民に覚悟させるために、あらかじめ計画された現実の吐露だったのか?

結論は出せそうにない。だが、ロシアで出されるシグナルをキャッチするため、テレビでおなじみのフレーズどおり、チャンネルはそのままにしておく必要がある。

しかし、このBBC報道を翌日にCNN(米国ニュースサイト)が、軍事作戦批判のロシア軍退役大佐、発言一転 ウクライナ反撃との見方は「誇張」・・・と否定しています。

あきらかにプーチン政権から批判されてのことです。大佐の身辺が気になります。プーチン政権は中立系や独立系メディアを強制停止させツイッター、フェイスブックなども閲覧使用を禁じています。一般人は「ロシア1」しか視聴できませんので、「ロシア1」を閉鎖できないのです。政府広報もできなくなります。

ニューズウィーク(米国ニュース誌)も「ロシア1」での政権批判を報道

ニューズウィーク報道をYahooニュースが転載しています。

「恥ずべきほど成果がない」 ロシア国営メディアが異例の軍部批判を流しはじめた
5/18(水) 18:21配信
ニューズウィーク日本版 https://news.yahoo.co.jp/articles/1bf4998ea85cdd2bc54d8927ef89b31cff9fb44e

ロシア国営チャンネルやプロパガンダを積極的に伝えていた特派員などから、従来であれば考えられなかったようなロシア軍への批判が聴かれるようになった。

●ロシア国営TVトークショーで、軍部を公然と批判

国営TV局『ロシア1』のトークショーでは、番組司会者のウラジミール・ソロヴィヨフ氏が兵站への不満をぶちまけた。「けれど、我々の兵に何かを届けるのは事実上不可能では。この不満は100回も述べてきた。」 氏は補給網に問題があると指摘し、前線の兵士に物資を届けるまでに長時間を要していると指摘している。

ウクライナ戦線で重要な役割を占めるドローンについても、生産数の少なさと輸送網の貧弱さが足かせになっていると氏は嘆く。「ドンバス地方に何かを持ち込みたいなら、(西部)リヴィウのウクライナ税関を通す方がまだ早い」との皮肉だ。

ソロヴィヨフ氏はこれまでプーチン政権のプロパガンダを積極的に担っており、国家批判の発言は異例だ。デイリー・メール紙は「プーチンの最も有名な操り人形のひとつ」であるソロヴィヨフ氏が軍部を「公然と批判しはじめたと報じた。

同紙は続ける。「ウクライナ政府転覆をねらう『特別軍事作戦』に数日間を見込んでいたところ、突入から2ヶ月以上が経つ。プーチンの太鼓持ちたちでさえ、進展のなさに言い訳が尽きたようだ。」

ここ数日でウクライナは猛烈な反撃をみせており、5月9日にはハルキウ北部の2つの都市を配下に取り戻した。少なくともこの地方においては、ロシアとの国境から約16キロの地点まで押し返したことになる。ロシア軍としては、ウクライナ深部に取り残された部隊への補給線の寸断の可能性も現実味を帯びてきた。

■ 「ロシア軍総動員でも効果薄い」 大佐が見解

軍への怒りを爆発させるのは、ソロヴィヨフ氏だけではない。番組内にゲスト出演したロシア国家院(下院)のセミョーン・バグダサロフ議員は、司会を務めるソロヴィヨフ氏の主張に大いに同調し、貧弱な物資補給に怒りを示した。「国(ロシア)は、戦時中のアプローチに移行する必要がある。馬鹿げた行動はもう十分だ。」

番組出演者らはさらに、兵士たちが「去年の装備(もはや旧式となった装備)」で戦地に送り出されているとも述べ、近代化が遅れるロシア軍の状況を憂慮している。

英メトロ紙は、NATOの支援を受けるウクライナ側が対戦車ミサイルやドローンなどで成果を挙げている点と対比しながら、ロシア側の兵器の古さを指摘している。

ロシア有利と思われた兵力差に関しても、もはや顕著な利点にはならないとの主張が出てきた。元ロシア軍大佐のミハイル・キョーダリョノク氏は国営TVへの出演を通じ、ロシア軍には物資も兵力も不足していることから、兵を総動員しても戦況が大きく好転することはないだろうとの予測を語った。「我々には、(前線への投入に備える)予備隊がないのだ」と氏は述べている。

これまでプロパガンダを積極的に展開してきた戦争特派員のアレクサンドル・スラドコフ氏も、ロシア軍の糾弾に転じた。ウクライナ軍を「卑劣」と批判しながらも、ロシア側も「(敵勢の人数と)1対1の割合」で村の強襲に臨んでいる、と苛立ちを募らせる。数の優位をまったく生かせていないため、「ウクライナ軍を押し返すことはできない」と断言している。この特派員はまた、日々押し寄せるウクライナ軍に対してロシア軍がかろうじて対処しているのみであり、「ルーティーンであるべき事柄をさも手柄のように語っている」とも述べる。

ロシア軍の指揮官たちは「恥ずべきほど成果を出していない」

子犬とウクライナ兵士

写真:塹壕で2匹の子犬と戯れるウクライナ兵士

ロシア軍の指揮官たちは「恥ずべきほど成果を出していない」↑

戦地での局所的な問題だけでなく、ロシアには国家として長期化する戦線を支えるだけの経済力が残っていないのではないかとの指摘も国内から出はじめている。軍事評論家のコンスタンティン・シヴコフ氏はTV出演を通じ、「我々の現行の市場経済は、我々の軍の需要に耐えることができない」との分析を示した。

豪ニュースメディアの『news.com.au』はこうした一連の批判劇を動画で取り上げ、「ウラジミール・プーチンのくぐつメディアがついにプーチンに背を向けた」と報じる。「プーチンのプロパガンダ機関らが、ロシア軍の状況をおおっぴらに批判しはじめた」とし、軍部への不満が表面化していると指摘している。

左翼応援系、反自民党の日刊ゲンダイも「ロシア1」報道でロシア批判?

日本国内の報道機関ではこの国営放送「ロシア1」についてはまだ分析されていませんが、左翼系応援、反自民党の「日刊ゲンダイ」が取り上げています。

あの国営放送が“プーチン戦争”批判を展開!ロシアでいま起こっていること
5/19(木) 14:31配信
日刊ゲンダイDIGITAL https://news.yahoo.co.jp/articles/3a22bf380b56ac498e177469946f639b915ec030

ロシアが国際社会から孤立
あのロシアでも、もう誰もプーチン大統領についていけない?

あのロシアで戦争批判が国営放送で公然と流されるのは異例のことだ。3月中旬には、やはり国営放送のニュース番組で女性スタッフが「戦争反対」と書かれたボードを掲示。あの時、女性は拘束されたが、なぜか今回はスルッと放送されている。筑波大名誉教授の中村逸郎氏(ロシア政治)がこう言う。

女性スタッフが拘束された3月中旬と現在では、全く状況が違っています。戦況の悪化はもちろんですが、ロシア自体が国際社会から完全に孤立してしまっている。“仲間”のはずの旧ソ連国までがロシアから距離を置いています。現状を嘆くホダレノク退役大佐は、『プロパガンダでなく現実を見ろ』『もう戦争は続けられない』というメッセージを発信したかったのでしょう。ホダレノク退役大佐は軍人で、アントノフ大使は外務省所属。少なくとも軍と外務省がプーチン離れを起こし始めているということ。そこに、メディアまで追随し始めた格好です。国営放送は多くの国民が見ています。今後、現場の兵士の士気に加え、国民感情にも多大な影響が出てくるでしょう

プロパガンダが通用しなくなれば、ロシア国民は一気に目を覚ます可能性がある。プーチン大統領はどんどん追い詰められている。

まとめ

ウクライナでの軍事紛争終結は簡単です。ロシアがウクライナ国から撤退すればいいのです。ロシアにも言い分がある(日本維新の会)説などはもってのほかです。

ウクライナにとっては自衛戦争です。この点では岸田政権は一貫して反露です。

ロシアに恐怖してはいけません。日本は英国以外の世界の国々が「ロシアが絶対勝つ」といわれた日露戦争に勝利した。戦うウクライナに栄光を!!

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