岐阜市の陸上自衛隊射撃場で3人が死傷(2人死亡1人重傷)した小銃発砲事件で、週刊新潮が殺人容疑で送検された自衛官候補生の男(18)の実名と顔写真を掲載しましたが、、、報道の正当性をめぐって意見が分かれています。
写真:週刊新潮 6月29日号
まずは実名報道は違法とする見解。
日弁連、週刊新潮に抗議 陸自小銃発射の実名報道
日弁連、週刊新潮に抗議 陸自小銃発射の実名報道
6/22(木) 19:41配信 時事通信
あぁ、日弁連かぁ・・
岐阜市の陸上自衛隊射撃場で3人が死傷した小銃発砲事件で、週刊新潮が殺人容疑で送検された自衛官候補生の男(18)の実名と顔写真を掲載したことを受け、日本弁護士連合会は22日、「違法で到底許容できない」と抗議する会長声明を発表した。
週刊新潮6月29日号は、「陸自3人殺傷『18歳』の実名と全履歴」とする記事で、男の名前や顔写真を掲載した。昨年4月に施行された改正少年法は、18、19歳を「特定少年」と位置付け、起訴後は顔写真など本人の特定につながる「推知報道」を可能とした。
声明は、緩和された推知報道について「法の理念から、なお極めて慎重な姿勢が求められる」としている。
週刊新潮編集部の話 残忍性や結果の重大性に鑑み、実名・顔写真を含めて実像に迫り、事件に至るまでの背景を探る報道を行うことが常識的に妥当だと判断した。
↑ 時事通信は週刊新潮のコメントも掲載しています。
次、デイリー新潮が・・・2015年掲載の長文ですが、。
国連だって少年の「実名報道」は禁じている/石井小夜子(子どもの人権連代表委員) 少年犯罪の「実名・写真報道」私の考え
デイリー新潮 2015年03月
20日
少年法で守るべきだが、罰則がないのはおかしい
週刊新潮の報道は少年法に違反すると日本弁護士連合会会長が遺憾を表明していますが、私もまったく同じ考えです。
特に今回は、名前や容ぼうなどの報道を禁じた「少年法61条」がクローズアップされています。では、なぜ、61条を守ることが大事なのか、それを説明しましょう。
そもそも少年法は、さかのぼれば日本国憲法13条の〈すべて国民は、個人として尊重される〉という規定と、同26条の教育を受ける権利から導かれている。これらは子供たちの成長と発達を保障しているものだということを知っておいてもらいたい。
もっとも、61条に反したからといって罰則はありません。実名報道された場合は、損害賠償の裁判を起こすことができますが、2000年の大阪高裁判決で訴えた側が負けたこともあって、弁護士会が抗議声明を出しても放置されたままになっているのです。
しかし、国際的に見れば、少年のプライバシーは保護されるべきだというのが変わらぬコンセンサスなのです。何より少年法の内容は、日本が批准した国際条約にもきちんと盛り込まれている。しかし、今回の事件では、そうした観点からはあまり語られていないのが残念です。
我が国は、国際人権法にある「子どもの権利条約」を94年に批准しています(註・憲法98条には国際条約の遵守が規定されている)。具体的にいうと、条約の第3条には〈児童の最善の利益の確保〉、そして16条には〈プライバシーの確保〉が記されている。また40条では、司法手続きのすべての段階でプライバシーが充分に尊重されなければいけない、とあります。
そのほかにも「国連最低基準規則」というのがあって、ここでも厳格なプライバシーの保護が規定されています。つまり、罪を犯した少年の特定につながる、いかなる情報も公開してはならないとあるのです。それはなぜか。規則の「注釈」には、プライバシーの公表によって犯罪者の烙印を押され、有害な影響をもたらすという証拠があると、はっきり示されているのです。
少年事件というのはメディアが書けば書くほど、社会の論調は厳罰化に向かってしまうものです。そうなると事件は、容疑者の少年とその家族だけの問題になってしまう。彼らは社会から疎外され、報道によってますます戻れなくなる。
実際、少年法は、00年以降、4回の改正を経ており、その内容は厳罰化されています。これに対して国連は、この間、3回も反対する勧告を出しているのに、そうした論議は全く起こっていない。一体何のために条約を批准したのかという気持ちです。
今回の事件では、容疑者の少年に対して厳罰を下すべきであるという風潮が強いのは事実です。しかし、以前の日本はもう少し寛容だった。正義感から実名報道することが、果たして正義の実現につながるのか。メディアにはそれを考えてもらいたいのです。
・
う~ん、犯罪者を社会から疎外してはいけない、う~ん。
・・・
では、最後にやや週刊新潮のやや味方?
小銃発射事件 『週刊新潮』18歳自衛官候補生の実名掲載「少年法改正前とは事情が異なる」辛坊治郎が解説
6/23(金) 11:20配信 ニッポン放送
キャスターの辛坊治郎が6月22日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。岐阜市の陸上自衛隊射撃場で男性隊員3人が撃たれた小銃発射事件で、『週刊新潮』(22日発売)が、自衛官候補生の男(18)=殺人容疑で送検=の実名や顔写真を掲載したことを巡り、「少年法の改正前とは事情が異なる」と解説した。
犯人は精神鑑定で不起訴無罪になる可能性もある
岐阜市の陸上自衛隊射撃場で男性隊員3人が撃たれた小銃発射事件で、22日発売の『週刊新潮』が、殺人容疑で送検された自衛官候補生の男(18)の入隊までの経歴などを特集した記事で、実名や顔写真を掲載した。『週刊新潮』編集部は「無差別大量殺人の惨事になる恐れもあり、社会に与えた衝撃はすさまじい。自衛隊への国民の信頼を揺るがしかねない問題で、重大性に鑑み、実名・顔写真を含め、背景を探る報道をすることが常識的に妥当と判断した」とのコメントを出した。
辛坊)『週刊新潮』は少年法の改正前も、20歳未満の少年少女による凶悪犯罪について、他のメディアが実名を一切伝えない中、何度も実名で報道してきています。今回も、その延長線上です。ただし、今回はいささかニュアンスが変わってきています。
今回、小銃発射事件を起こした自衛官候補生の男の実名について、現状ではどのメディアも実名報道はしていません。実名報道したのは『週刊新潮』だけです。
ただ、今回の事件は少年法の改正後ですから、自衛官候補生は「特定少年(18歳、19歳)」に当たり、起訴されると氏名や顔写真などの報道が可能になり、検察が公表する場合もあります。起訴された場合、他のメディアも実名報道に切り替えるでしょう。それを考慮すると、『週刊新潮』が将来にわたって実名などが表に出ないから、伝えることに意味があると実名報道にこだわっていた少年法の改正前とは事情が異なります。したがって、かつての実名報道による効果と、現在の効果は少し変わってきているといえます。
一方、自衛官候補生の精神鑑定は行われる可能性が高いです。1984年に陸上自衛隊射撃場で当時20歳の隊員が射撃訓練中に同僚の隊員に向けて銃を発射し、4人が死傷した事案では、発砲した隊員は心神喪失状態だったとして不起訴処分になりました。今回も同様に心身喪失状態だったとして不起訴処分となれば、実名は公表されないことになります。
そもそも、18歳は民法上で成人なのに、少年法では少年とされていることに、私は納得がいきません。ちなみに、世界を見渡すと、少年犯罪だからといって実名を伏せる国は珍しいです。日本で当たり前だと思っていることが、世界でも当たり前だと思ってはいけないという認識を持ったほうがいいです。
・
まとめ
2人を殺し、1人に重傷を負わせた犯人を少年だから、社会から疎外してはいけない、?? 民法では18歳は民法上で成人なのに、少年法では少年とされていることに、私は納得がいかない・・と指摘の辛坊治郎氏に頷きたくなりました。